映画「丘を越えて」の中で、西田敏行さん演じる昭和の文豪・菊池寛と西島秀俊さん演じる美青年の両方から愛された池脇千鶴さん。池脇さんが演じたのは昭和の華やかな時代、やがておとずれる戦争の気運の中、恋に仕事にと明るく、逞しく生きる女性・葉子。池脇さんが着こなす昭和モダンガールのファッションも早くも話題に!共演のベテラン俳優陣との現場での裏話、制作秘話など、お話を伺いました。

監督:高橋伴明
脚本:今野勉
原作:猪瀬直樹「こころの王国」(文春文庫)
出演:西田敏行、池脇千鶴、西島秀俊、余貴美子、嶋田久作、猪野学、利重剛、戸田昌宏、中田寛美、下元史朗、金山一彦、石井苗子、猪瀬直樹(特別出演)、峰岸徹
製作:「丘を越えて」製作委員会
配給:ゼアリズエンタープライズ/東映ビデオ
5月17日より名古屋名演小劇場にて公開
ストーリー)
舞台は昭和初期の東京。サラリーマン、飛行機、地下鉄、映画館など現代生活・文化の原型が誕生し、
銀座をモガ・モボたちが闊歩していたが、自動車、洋服、働く女性などはまだ珍しかった時代。
江戸情緒を残す下町娘・葉子(池脇千鶴)は、ベストセラー小説「真珠夫人」の作家で、文藝春秋社社長でもあった菊池寛(西田敏行)の私設秘書となる。菊池の人情に厚く、新しい時代にむけて文化と意識の変革に情熱を燃やす姿に信頼を寄せていく。一方、菊池が新しく創刊した雑誌「モダン日本」の編集者で朝鮮の貴族出身の美青年・馬海松(西島秀俊)が葉子を魅了する・・・。
―葉子を演じるにあたり高橋監督から何かオーダーはありましたか?
いいえ、特にありませんでした。伴明監督とは以前もお仕事をさせていただきましたが、本当に優しい方で、“好きなように演じていいよ”と言っていただいて。私なりに自由に演じさせていただけたと思います。幸い実話をもとにしたフィクションということもあって、資料が沢山あったので目を通して私なりの“葉子”をイメージしました。
―池脇さんがイメージした“葉子”はどんな女性でしょうか?
あの時代は文明開化は進んでいたけれど、それに民衆の意識はまだ追いついてなかったと思います。仕事をする女性が珍しかった時代ですから。そんな時代に女流作家になりたいという夢をかなえるために挑戦した葉子は決して妥協しない女性だったと思うのです。仕事にも恋愛にもパワフルでまっすぐな生き方がカッコいいんです。
―最初下町の娘だった葉子が、洗練された大人のモダン女性に変身をとげるのが、スクリーンでハッキリとわかりますね。
葉子自身の振舞いや言葉遣いの変化でしょうね。最初はぎこちなかった洋服やハイヒールなどの着こなし、
言葉づかいや振る舞いが、モダンな生活にふれていくことで洗練されていったと思います。その一方で真剣なシーンでも、つい江戸弁の言葉遊びが出てしまったり。どんなに洗練されても、葉子はそんな江戸の情緒が体に染みこんでいる。江戸が息づいているんですね。
―確かに劇中では、葉子の江戸弁のジョークもたくさん出ますね。母親役の余貴美子さんとのやりとりも絶妙でした。江戸言葉はいかがでしたか?
付けたし言葉の“嘘を築地のご門跡“とか、ありがとうの意味を表す”有難山のほととぎす”とか、関西出身の私にとって江戸弁の言葉遊びはすごく楽しかったですし、粋で可愛いなと思いました。観てくださる方には、そういう江戸言葉も楽しんでいただきたいですね。
―葉子のファッションも見所ですね。
そうですね。葉子が着ている洋服は典型的なモガという感じでどれも素敵です。洋服もさることながら葉子の着物もすごく可愛いものばかりで嬉しかったですね。葉子という女性は本当にオシャレだなと思います。着物の重ね方や色あわせもオシャレですごく楽しめました。
―ストーリーの中で2人の男性に愛されるわけですが、葉子は魔性の女性だと思いますか?
葉子は誠心誠意、仕事に真っ直ぐ、恋にも真っ直ぐの女性です。
葉子は自分の人間性と才能を愛してくれた菊池寛に恩を感じて感謝していたし、一方で尖ってはいるけれど情熱的に葉子を愛する青年・馬海松にも愛情を感じていました。タイプの異なる男性ではあるけれど、2人の男性が真剣に愛してくれたからこそ、葉子も真剣に誠意をもって接したと思うのです。この3人の真剣な愛情のトライアングルがあったから決してドロドロしたものに映らなかった。それが葉子の魔性の部分かもしれませんね。
―ベテラン俳優陣に囲まれた現場の雰囲気はいかがでしたか?
まさにプロの現場だったと思います。監督をはじめ、プロの俳優、そしてプロのスタッフですごくいい雰囲気の現場でした。少しピリッとしたいい緊張感があり、毎日現場に行くのが楽しみでしたね。
監督が皆を引っ張ってまとめていく力が抜群にある方なんです。監督自身の頭の中に、ちゃんと絵があるので皆が迷わずにスムーズに撮影が進んでいったと思います。
―菊池寛役の西田さんとの共演シーンがたくさんありますが、スクリーンで見る限り西田さんとの息も
ピッタリでしたね!
ええ、西田さんは本当に優しい方で、1シーンとり終えると「ちぃちゃん(池脇さん)今のシーン良かったよ~。もう泣きそうだったよ」って褒めてくださるんです。だからどんどん自信もついていくし、最後には怖いものがなくなって安心して演技に取り組めました。
―この映画の中で好きなシーンはありますか?
西田さんが泣き笑いのような表情をするシーンが最後のほうにあるのですが、その表情がなんとも言えず好きですね。すごくいい表情をされているんです。
―コミカルな演技からシリアスなものまで本当に幅広い演技をされますが、池脇さんにとって映画とは?
作品として残るので、私にとって映画は本当に特別なものです。台本をいただく瞬間は本当に嬉しいです。「やった~!台本が来た!」という感じ(笑)。そして、映画が完成したときの達成感と安堵感といったら。完成後、試写を観てつい自分の悪いところばかり探してしまうクセがあるのですが、「この演技はあの時の自分しか表現が出来ないんだわ」と思うようにしています。自分の成長の記録ですね。
―最後に、この映画をご覧になる方にメッセージをどうぞ。
この映画の設定は昭和なのですが、古いのかそれとも斬新なのかわからない魅力があります。
そういったところを楽しんでいただければと思います。
とても明るい映画と感じるのか、それとも後の戦争を感じさせるシリアスな映画なのか・・・。私自身がご覧になる皆さんの意見や反応を聞きたいです。
ぜひご覧になっていただいて色々感じていただきたいです。
<インタビューを終えて>
池脇さんがインタビュー会場に登場した瞬間、本当に画面の中から葉子が出てきたような気がしてドキッとしました。柔らかい物腰とオットリとした雰囲気の持ち主です。その清潔感に溢れた美しさは見とれてしまうほど!
丁寧かつ穏やかな口調で、一つ一つの質問にきちんとご自身の考えを持って答えてくださいました。
柔らかな雰囲気の中にも、強い意志と芯を感じさせる聡明な女性の印象を受けました。
今後の活躍が本当に楽しみな女優さんです。そんな池脇さんの魅力がタップリ詰まった映画「丘を越えて」。ぜひご期待ください!(編集部・木下)


